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可哀想な名前のニンニクカズラ  



HP編集略号:gyoboku1.htm

和名:クラタエバ

英語名:Crataeba タイ名:クム・ナーム
改編:2017年3月13日 初稿:2011年7月22日 撮影:チョンブリ県


 バンコク郊外の公園で高さが15m以上もある高木をスケッチをしている初老のタイ人が

いました。スケッチを楽しむタイ人なんて珍しいなと思いつつ、釣られるようにして高木を見

上げていると、それに気付いた彼が微笑を送ってくれました。



初老のタイ人がスケッチしていた落葉樹


   彼 『 この木に興味がありますか? 』

   僕 『 木の名前は知りませんが、上の方に花が咲いていますね 』


 彼の説明によると、最初は『緑色』 だが、次第に『 白色』に変わり、開花時には黄色に

変化するようです。高木の頂き近くを見ると、白色と黄色の花が咲いていました。


   彼 『 幹に名札がありますが、クム・ナームという医薬の木ですよ 』
    
   僕 『 クム・ナームの意味は何ですか? 』
    
   彼 『 水辺(クライ・ナーム)を好む木なのでクム・ナームなのでしょうかね・・・ 』
    
   僕 『 英語名をご存知ですか? 』
    
   彼 『 Three-leaved caper だと思います 』




 後日、PCで CAPER を牽くと、地中海沿岸産の西洋風蝶木とあり、蕾の酢漬けを料理の

付け合せとして用いるとあります。
 英名の Three-leaved caper と タイ名のクム・ナーム

で検索すると、原産地はインド、バングラデッシュですが、今は熱帯から亜熱帯にかけて

広く自生している落葉樹でした。


   彼 『 アーユルヴェーダ aayurveda と言うインドの伝承医学を御存知ですか? 』

   僕 『 いいえ、知りません 』

   彼 『 五千年も前から続くインドの伝承医学ですよ 』

   僕 『 西洋医学と何が違うのですか? 』

   彼 『 アユールヴェーダは、皮、葉、実を薬として利用する伝承医学です 』

   僕 『 漢方薬やタイ方薬のようなものですか? 』

   彼 『 強い影響を受けているかもしれませんね 』


   僕 『 随分とお詳しいですね 』

   彼 『 今は引退の身ですが、以前は医者をしていました 』


 彼の説明によると、クム・ナームは、アユールヴェーダの世界では大事な薬木であり、

その樹皮を使った治療薬は、泌尿器系疾患の最も効果的な治療薬として世界中に知られ

ていると言うのですが、泌尿器系を病んだことのない僕には初耳の薬名です。


緑葉が一つの葉柄から3枚出る3出複葉
Three-leaved-capeh


 因みに、アユールヴェーダの語源は、サンスクリット語の 『 アーユス aayus 』=生命、

『 ヴェーダ veda 』=科学(知識)と云う言葉の複合語で、その意味は 『 生命科学 』なのだ

そうです。インドの伝承医学らしい語感を持つ言葉だとは思ったのですが、サンスクリット語

が語源だと知って妙に納得してしまいました。後日、タイ語のネット記事に目を走らせると

具体的な疾病名と効果が記されていました。


 ■花⇒ 目の痛みと喉の痛みを和らげる
 ■葉⇒ 食欲増進、下剤、寄生虫排出、嘔吐、皮膚病、関節リウマチ、浮腫に効く
 ■実⇒ 解熱作用、汗取り作用に効く       
 ■皮⇒ 泌尿器系疾患 


 古の南部タイでは、酸っぱくて苦い若葉や花を漬物にしたり、茹でてナーム・プリック・

タイ(タレ)をつけて食べたり、余った木の葉を家畜の餌にしたようです。


ほのかに香る花の直径は4cm前後


 学名や属名として使用されている クラタエバ (Crateva)の由来は、毒を医薬に利用す

る技術を持ったギリシャ人医師のクラテヴァス氏(Mr.Kratevas) の名前に因るそうです。


 日本語の通称名に関しては、ラテン語の学名や属名の Crateva を片仮名読みした

『クラタエバ』、或いは、日本独自の用途から名付けられた『ギョボク』(魚木) とした記述

がありました。 如何して 『 魚木 』 と云う名前が付いたのか、野次馬根性で調べると、

次のような説が出てきました。



 クラタエバ Crateva (Three-leaved cape) の柔らかくて軽い材質を利用して、魚の形を

したイカ釣り用の疑似餌を作ったことから 『 魚木 』 の通称名が生まれたと言うのです。 

別れ際に、元医師の初老のタイ人が呟くような口調で、異国人の僕に告げました。


   『 古い世代のタイ人はね、此の木を吉兆の木として信仰しています 』

   『 だから、この木は庭の東方の角に植えると決まっていたのです 』

  『最近はね、この木を知るタイ人は本当に少なくなってしまいました 』 


 僕とほぼ同じ年代と思われる彼に、貴重な植物を教えて貰った感謝の気持ちを述べて、

夕暮れ近くなった公園を後にしました。  
           


《 魚木の植物上の分類 》
 科名  Cappa-ridaceae風蝶草科
 属名  Cappa-ridaceae(ギョボク属)
 学名  Crataeva-Magna(Lour.)DC
 和名  クラタエバ
 通称名  魚木(ギョボク)
 英名  Three-leaved-capeh (西洋風蝶木)
 タイ語  クム・ナーム
 原産地  インド、バングラディシュ
 花言葉   -




 
 読者の方からのコメント

 
 hiro-1からのお返しコメント


■タイにも風水?
いろいろと珍しい植物があるものですね。 もっとも地球は人類より先にあるのですから、いろいろな植物があるのも当然ですよね。 それにしても、タイにも「風水」はあるのですね。 家を建てたりするときにも方角をみることがあるのでしょうか。 気になります。
ワイワイ 2011-07-22 14:59:25


■ワイワイさん
タイの中国系タイ人は風水にかなり敏感な人が多いようですが、タイ系タイ人も独自の吉兆に関わる風習を持っていて、方角、色、生まれ曜日、時間などの縁起を担ぐ人も少なくないようです。

hiro-1
2011-07-22 20:49:20

 

■すごい
世界にはいろんな植物が生息するんだということを再認識させられますね

バイリンガル
2011-07-22 22:15:01

 

■バイリンガルさん
アユールヴェーダの薬剤として使われる樹木なんて初耳でしたが、その薬剤に使われる材質が日本では魚釣りの疑似餌として使われるなんて・・・これまた初めて知りました。

hiro-1
2011-07-23 01:02:11



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