HP開設の御挨拶

自己紹介

主題名別の目次 (年月日順)

花木名別の目次

トップページ


サボテンですか? 魔破羅邪です!



HP編集略号maharaja1.html

和名(流通名): マハラジャ

英語名:Euphorbia lactea (ラテン語?) タイ語名:Yok Mahaa Laap
改編:2011年6月22日 初稿:2009年10月29日 撮影:タイ・カーンチャナブリー県


 2008年の12月も押し迫った頃、ミャンマーと国境を接するタイ・カンチャナブリー県北西に残る

13世紀初頭の石造城郭寺院遺跡の獅子の国自然公園を訪れました。 


    (注1)獅子の国自然公園 タイ名:Uthayaan Purawatisaat Muang Sin


 遺跡の特徴を見れば、明らかにクメール様式であり、13世紀初頭に、クメール勢力がビルマ国境

近辺のタイ西部にまで及んでいたことを、外国人の僕でも容易に実感できる遺跡です。



タイ西部に残るクメール様式(カンボジア)の遺跡  ( 獅子の国・歴史自然公園 )


 現在のタイ国民の95%以上は、南伝仏教の上座部仏教(旧蔑称:小乗仏教)を深く信仰してい

ますが、13世紀初頭創建 の上掲寺院の発掘調査によって、この時代に広く信仰されていた仏教

は、南方上座部仏教ではなく、日本と同じ大乗仏教だったことが証明されたとする記述がありました。

獅子の国・歴史自然公園 (Uthayaan Purawatisaat Muang Sin )は、考古学者のみならず、仏教の

関連学者にとっても、実に貴重な寺院遺跡と言えるようです。


 12月末のカーンチャナブリー県の日中の気温は33℃、湿度は70%を超えていました。 炎天下

のクメール遺跡の寺院巡りは、前期高齢者の僕にとっては難業苦行です。 緑陰を見つける度ごとに

腰を下ろして水分の補給をしなければなりません。



 タイ国における大乗仏教から南方上座部仏教への変遷も興味深いのですが、本日の主題は、遺跡

公園内で見た極彩色のサボテン(?)のような植物です。 歴史公園内の野外ベンチに腰を降ろして

暫しの休憩をしている時、奇妙な形と彩をした多肉腫の鉢植えの観葉植物が置いてあるのに気付き

ました。 サボテンのように見えるのですが、目を凝らして見ると、どうもそうではなさそうです。 


タイに魅せられてロングステイ タイに魅せられてロングステイ
≪セッカとアルビノ化が顕著なマハラジャ≫ ≪アルビノ化が進んだマハラジャ≫


新婚時代もお婆さんになった現在も、花木をこよなく愛する僕の連れ合いに訊ねました。


『このサイケデリックなサボテンのような植物の名前は何て言うの?』

『ユーフォルビア・ラクティアじゃないかしら?』



 妻の薀蓄(?)によれば、アルビノ化とは、葉緑素が抜けて変色すること。 綴化(セッカ)とは、鶏頭のように奇妙

な形に変異することらしいのですが、脳みそが石化した僕の頭では、分かったような、分からないような、いま一つ

ピンときません。


 老爺の僕が極彩色の植物を前にして、老妻にしつこく日本語で問い質していると、タイ人中年男性が、唐突に

『 コンニチワ 』 と日本語で挨拶したので吃驚したのですが、あとはタイ語で滔々と喋り始めました。


 『 この植物のタイ語名を知っていますか? 』

 『 ヨック・マハー・ラープ って書いてありますね 』

 『 タイ文字も読めるのですか! 意味もお分かりですか? 』

 『 ヨックは翡翠玉、マハーは偉大な、ラープは幸せ・・つまり、“ 縁起の良い翡翠玉 ” ですね 』



タイに魅せられてロングステイ
ヨック・マハー・ラープ と書かれたタイ語の名札


 タイ語を理解する日本人だと分かると、彼は堰をきったように耳慣れない園芸言葉を連発して喋り

始めました。 日本語の園芸言葉すらも分からない僕には難しすぎる話題です。連れ合いに通訳を

頼むしかありません。 後日、検索して確認した事も含めて、彼の長い話を大雑把に纏めると、次の

ようなことだったと思います。


ヨック・マハー・ラープには、生命力の弱い自生種と生命力の強い栽培種の二種類がある。

生命力の弱い自生種は、ワシントン条約によって輸出入が固く禁止されている。

販売できるのは、同じ仲間のキリン角( Eupholbia neriifolia )に接ぎ木した栽培種だけである。



 彼自身は、違法な自生種は1本も売っていないことを頻りに自慢する、タイ人らしくない立派なタイ人

でした。彼に促されて、ヨック・マハー・ラープ (ユーフォルビア・ラクティア) の茎部分を観察すると、

アルビノ化によって色の退化した上部の茎が、明らかに違った色の茎にに接ぎ木してあります。


 この部分がワシントン条約によって許可されているキリン角のEupholbia neriifolia と思われます。

連れ合いが僕に説明するために発する『 ユーフォルビア・ラクティア 』について彼が訊ねます。


『 ユーフォルビア・ラクティア は何語ですか? 』

『 英語名かしら。ラテン語かもしれませんね 』

『 どんな意味ですか? 』

『 分かりません 』

『 日本名は何ですか? 』

『 御免なさい。何も分かりません 』



 これまた後日になって分かったことですが、タイで栽培されたヨック・マハー・ラープの輸出先は、

世界に冠たる“THE 商社”の威力でしょうか、その殆どが日本だと知って吃驚仰天! 


 植物学上の属名ユーフォルビア・ラクティアの和名を調べたところ、インターネット通販上の流通名

は、マハラジャの俗称で流布していることが分かりました。 魔破羅邪 ( マハラジャ )と言えば、僕が

まだ溌剌(?)とした若者だった1980年代の頃、東京のディスコ店や暴走族のグループ名として魔破

羅邪 ( マハラジャ )という奇妙奇天烈な呼称が流行っていました。少し艶っぽくてエキゾチックな言葉

の響きが、僕のような田舎者には、実に魅惑的で誘惑的だったことを覚えています。


 魔破羅邪の語源は、古代インド語のサンスクリット語(梵語)のマハーラジャ Maahaaraja (注)だろ

うと思います。


    
Maahaaraja (マハーラジャ)=偉大なる王侯、Maahaa=偉大な 、Raja=王侯


 日本語も大陸伝来の漢語や古代インド語(サンスクリット語)の影響を強く受けていますが、タイ語に

もクメール語や古代インドのサンスクリット語が多く混入しています。 因みに、サンスクリット語系の

尊称語とされる Mahaaraja (マハーラジャ) は、タイでは、大王の尊称語であるマハー・ラーツという

タイ王朝の王族語として現在も使われています。


サンスクリット語

 Maahaaraja

 偉大なる王侯
タイ語(王族後)  Maahaaraat

 大王 ( 偉大なる王様 )       

日本語(俗称)  魔破羅邪  サンスクリット語の当て字?
タイ語(花名)

 Yok mahaa Laap

 大きな幸せをもたらす翡翠玉



 タイ国の王朝の歴史に名を残す多くの王様の中で最も尊敬されている王様と言えば、ラムカムヘン

大王(スコータイ王朝)、ナレスアン大王(アユタヤ王朝)、チ゛ュラロンゴーン大王(現王朝)ですが、

タイ人が、Mahaaraat ( 大王 ) の尊称を付けて敬うのは、この3人の王様に限られています。


 ところが、この植物の尊称名は、Mahaaraat ( 大王 ) ではなく、Mahaaraap ( 偉大な幸せ ) と呼ば

れています。 植物の名前に、Mahaa−raat (大王) を冠するのは畏れ多いと考えた植物学の権威

者が、少しばかり捻って、Mahaa−raap ( 偉大な幸せ ) としたのでしょうか?


 タイでの生活が少しばかり長くなったので、 ヨック・マハー・ラープの余韻の美しさにも心を惹かれ

ますが、青春時代を過ごした日本を想い出させてくれる 『 魔破羅邪 』の妖しい響きにも捨て難いも

のがあります。


タイに魅せられてロングステイ タイに魅せられてロングステイ


 それにしても、日本の 『 魔破羅邪 』は、この植物の特徴を生き生きと表現する漢字だと感心するの

ですが、何処の何方さんが 『 魔破羅邪 』 という絶妙な名前を当て字されたのでしょうか?


 学名  Euphorbia lactea (ユーフォルビア・ラクティア)
 科名  トウダイグサ科
 属名  Euphorbia(ユーフォルビア)
 インド 名(?)   Maahaaraja?、意味:王侯
 通称名  ユーフォルビア?
 日本の流通名  魔破羅邪( マハラジャ)、古代インド語(サンスクリット語)の当て字?
 タイ名  Yok Mahaa Laap(ヨック・マハー・ラープ)、意味:大きな幸せをもたらす翡翠玉
 特性  多年草、多肉植物、半耐寒性
 原産地  インド
 用途  観賞用






読者の方から頂戴したコメント


 hiro-1からのお返しコメント


■勉強になりました
サボテンの一種かな〜と勝手に思っていました。アユタヤの駅で長いこと待たされ、ホームをぶらりしている際に変わったサボテンを写して帰りましたが、珍しいものの出会いが旅行の楽しさでもありますね。 チェンマイの風船灯も感慨深いですね。
queen302 2009-10-29


■queen302さん
タイ生活も長くなりましたが、初めて見る奇形の植物でした。仰るとおり、こんな出会いがあるから旅が楽しくなるのですね。
hiro-1 2009-10-29 22:40:02


■初めまして
hiro-1さん、いつも花の話題、他の方の話題に上らないお寺(ワットカーオ・ス・ギム他)、サムットプラカーン、最近ではアユタヤ王宮跡地等々、実際自分が訪れたこともあり、大変興味深く拝見しています。

今回の「植物」ですが、私の知る限りでは「マハラジャ」と呼ばれているように思います。行きつけの花屋さんで見つけて「いかにも、というネーミング!」と花屋さんと笑ったことがあります。 その時はまさかタイから来ているとは知りませんでしたが。 他にも心に残るお話は一杯あるのですが、とりあえずここまでにして、今後もよろしくお願いいたします。
okefenokee 2009-10-29 10:52:55  


■okefenokeeさん
お読み頂きありがとう御座います。“ マハラジャ ” ですか!随分と大仰な名前ですが、言い得て妙ですね。
hiro-1 2009-10-29 22:44:07


■びっくり* 
すご〜い豪華な・・?グロテスクなお花ですね!存在感があって、インパクトがありました。
*興味クルクル *キョンキチ* 2009-10-29 11:06:24


■興味クルクル*キョンキチ*さん
okefenokee さんのコメントによりますと、日本では マハラジャと呼ばれている由。豪華+グロテスクな感じが、まさにインドを思い起こさせますね。
hiro-1 2009-10-29 22:48:39  


■なるほど〜
題名を見て、「???」でしたが、納得です!すごい植物ですね〜見た目もインパクトありすぎ Σ(・ω・ノ)ノ!
micchon 2009-10-30 01:22:37  


■micchonさん
マハラジャと書くよりも、閻魔羅邪と漢字化した方がこの花のイメージに近いかもですね。
hiro-1 2009-10-30 04:09:56


■ベランダにあります
小さいのをもらったのですが青い茎の部分も大きく育ち1mくらいになったのですが、 ある日くれた人に鋏で切られてしまいました。それでも元気に生きています。
ms 2009-10-30 17:04:15


■msさん
栽培種だと日本でも育つのですね。大きく成長すると佳いことがあるかもしれませんね!
hiro-1 2009-10-31 01:24:30


■hiro-1さん
日本でなくバンコクです。soi13です。
ms 2009-11-02 14:45:23

■msさん
失礼致しました。吉兆の木が大きく育つと佳いですね。
hiro-1 2009-11-02 19:38:31

inserted by FC2 system