バンコク郊外の現国王妃のお名前を冠した公園内の橙色のドーク・ケム(針の花)の植え込みの上
に、五弁の白花が一輪だけ落ちていました。 偶然が織り成す橙色と白色の取り合わせが何とも
印象的に思えて、思わず足を止めてしまいました。
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白花の花弁と花芯の痛み具合から察するに、この場所に舞い落ちてから数日を経過していると思
われます。何の花だろうと思って頭上を見上げると、タイの其処彼処で頻繁に見かける『
ティーン・
ペッツ 』 (日本名:キョウチクトウ)に似た筒型の白花が、ドーク・ケム(針の花)の植え込みを見下
ろしていました。
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高さ13m前後の高木に咲く直径4cm、花筒1cm程度の五弁の白花 |
白花の咲く枝木には、見覚えのある卵状披針形の葉に囲まれた楕円形に近い緑色の果実が取り
ついています。(下掲写真) この花木の特徴を簡単に纏めると・・・次のような感じです。
・高さ13mは優にある高木
・枝先に輪状に互生する長さ20cm前後の厚みと光沢のある卵状披針形葉、
・枝先で集散花序になって頂生する筒型五弁花の直径は5cm、小さな花芯は黄色
・枝先からぶら下がる少し楕円形の果実の直径は8cm前後
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この花木と果実の特徴からすると、タイの海辺や河畔に近い其処彼処で見掛ける『 ティーン・ペッ
ツ 』 (下掲写真)に違いないと思ったのですが・・・よくよく観ると、葉の形状が違います。
タイの彼方此方で見かける毒素の薄いティーン・ペッツ |
タイ名 |
ティーン・ペッツ ( 直訳:アヒルの足 ) |
英語名 |
Sea Mango |
学名 |
Cerbera manghas L. |
科名 |
Apocynaceae キョウチクトウ科 |
属名 |
Cerbera |
種名 |
C. manghas |
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その周囲をウロウロしていると、幾本もある幹の一本にぶら下がっていた花木の名札(上写真)を
発見! アレッツ! 僕が思っていた名前と合致していたのは科名だけで、タイ語名も属名も違って
いるではありませんか!?
・属名は、Cerbera ではなく、Cerbera odollam Gaertn となっています。
・タイ名は、ティーン・ペッツではなく、トン・ペッツ・ナームと記されています。
・Pong Pong は、マレー語だと思いますが・・・よく分かりません。
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トンペッツナームの直径6cm〜8cm程度の楕円形の果実
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テイ-ンペッツの葉の形状とトンペッツ・ナームの葉の形状が異なるとなれば、両者が異なる属の花
木と認めざるを得ません。 その違いを尋ねたくとも、公園の植栽担当者の姿も見当たりません。
夕暮れも迫ってきたので、自宅に戻って調べることにしました。
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トンペッツナームの直径12cm前後の熟舌姿。殻の表面は縦縞の凹凸有り。 |
公園の看板に記してあった学名の Cerbera odollam Gaertnを検索すると、目を疑うばかりの吃驚
の記述が続々と出てきました!
・実、葉、茎、根、樹液の全てに、人命に影響を及ぼす有毒物質を含む。
・種子の仁には、猛毒のアルカロイドを含む。
・海岸でキャンプした人が、バーベキュの串に使用して死亡する事件発生
・自殺に多用されることから、自殺の木(Suicide tree)の別名あり。
・毒殺に使われたことから毒林檎(Poison Apple)の異名もあり。
不特定多数の人々が集まる公園の観葉樹や防潮林として、強い毒素を有するトン・ペッツ・ナーム
を植栽するとは! と思って吃驚したのですが、調べてみると、日本の奄美以南の諸島の海岸地域
にも自生していることが分かって吃驚!
日本での通称名は、沖縄キョウチクトウだそうですが、目に入ると視力を失ってしまう恐れもある事
から、沖縄方言でミフクラギ(目脹ラ木)と呼ばれているようです。 日本国では、水産資源保護法に
よって、ミフクラギ(目脹ラ木)を使用した毒流し漁法を固く禁止しているとありました。
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タイで植木鉢の代替物として販売されているティーン・ペッツの殻 |
タイでは毒素の薄いティーン・ペッツの殻を、植木一鉢5バーツ(14円)で販売しています(上写真)。
タイとは言えども、さすがに、毒素が強くて、毒林檎の凄い異名を持つティーン・ペッツ・ナームの殻は、
売っていないようです。 |
毒素の強いティーン・ペッツ・ナームの植物名分類 》 |
科名 |
キョウチクトウ |
亜科 |
- |
属名 |
Cerbera ミフクラギ属 |
学名 |
Cerbera manghas L. |
別学名 |
Cerbera odollam Gaerth , Cerbera lactaria Ham. |
種名 |
ミフクラギ C.manghas |
タイ名 |
ティンペットナーム、ティンペットタレー |
和名 |
オキナワキョウチクトウ (沖縄夾竹桃)
沖縄方言: ミフクラ木 (目脹ら木) |
別名 |
- |
中国名 |
- |
英名 |
Sea Mango |
原産地 |
亜熱帯〜熱帯 二本分布:奄美諸島以南 |
性状 |
樹高20m、花は集散花序5弁、葉は倒披針形 |
花色 |
- |
花言葉 |
- |
用途 |
良質の木炭、葉は感冒薬、花は血液浄化 |
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