昨年の12月中旬頃、バンコク郊外の湿地帯を散策している時、 常緑蔓性多年草の
食虫植物の 『 ウツボカズラ 』 を見つけました。子供の頃に植物年鑑で見たことがあるよう
な気がしますが、路傍の藪の中でぶら下がっている本物を見たのは初めての経験です。
その滑稽な形に興味を惹かれて撮影していると、直ぐ傍で草刈りしていたタイ老人の
『 この外国爺は何をしているのだ? 』 の怪訝な目線とがっちんこしてしまいました。
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僕 『 この面白い植物のタイ語名は何ですか? 』
彼 『 moo-khao-moo-keng-ling だよ 』
前半の moo-khao は 『 歯釜(羽釜) 』 (僕の田舎の方言?)、後半の moo-keng-ling は、
『 猿のスープ鍋 』の意味だと思うのですが・・・2つの器具名を併せて一つの名前にする
発想が面白いですね。
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彼 『 細蔓の先が成長すると moo-khao-moo-keng-ling になるよ 』
老人の説明によると、蔓の部分が直ぐ近くの他の植物に巻きついて適当な高さまで這い
上がり、やがて、蔓の先っぽが徐々に変形して壺のような捕虫器を形成するようです。
日本語名の 『 ウツボカズラ 』 は聞いたことがあるのですが、 『 ウツボ
』 の漢字を
調べるまでは、あの凶暴な海の魚の 『 うつぼ 』 だとく思い込んでいました。
『 ウツボカズラ 』(靫葛)の由来は、弓矢が雨に濡れるの防いだり、腰や背に負って
運ぶための中空の弓矢壺の形状に似ていることから生まれた名前のようですね。昔の人
は、この中空の弓矢壺のことを 『 ウツボ 』( 靫 ) と呼んでいたのだそうです。
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高等な『 開閉式の蓋 』 と思ったのですが、単なる雨よけでした。
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『 ウツボカズラ 』(靫葛)の捕虫器の上部にある 『 蓋 』 の役割は、捕虫器に落ち込んだ
獲物が逃げ出さないようにする高等な仕組みだろうと思ったのですが・・・
彼『 捕中袋に雨水が入りずらくするためだけだよ 』
しかし、蓋と補虫袋縁の間隔がかなり広すぎるので、雨避けの機能が果たせないのでは?
と疑ってしつこく訊ねると・・・・・
僕 『 激しい雨が降れば、捕虫袋は雨水でオーバーフロするのでは?
』
彼 『 そうだよ、簡単に雨水で一杯になって零れ出てしまうよ 』
僕 『 そうなると、消化液が無くなってしまいますね 』
彼 『 心配ないよ、直ぐに蒸発して、新しい消化液が溜まるからね 』
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東南アジアに70種のウツボカズラが存在するとか。
(上掲2枚の写真は、タイ語のウイキペディアより拝借)
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老人の説明によると、捕虫袋の中に落ち虫は、袋内の粘膜状の消化液(酵素液?)で
身体の自由が効かなくなってしまうので、蓋を態々閉めて獲物を閉じ込める必要は無いのだ
そうです。 中には、捕らえた虫が脱出できないように、開口縁が反転した形状の種類もある
そうです。
植物の生態の奥行の広さ!!・此の日も興味深い植物と出遭うことが出来ました。 |
学名 |
Nepenthes |
科名 |
ウツボカズラ科 Nepenthaceae |
属名 |
ウツボカズラ属 Nepenthes |
種名 |
− |
タイ名 |
モー カオ モー ケンリン |
英名 |
Tropical Pitcher Plant モンキーカップ |
日本名 |
靫(うつぼ)・・・弓矢を入れるか駕籠 |
漢名 |
− |
性状 |
常緑蔓性多年草、食虫植物− |
原産地 |
東南アジア (70種) |
花言葉 |
−
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