HP開設の御挨拶

主題名別の目次 (年月日順)

花木名別の目次

トップページ


蔑まれた過去を持つタイのプルメリア



HP編集略号templetree1.html

和名:インド・ソケイ

英語名:Temple Tree タイ語名: Lanthom
改編:2011年3月14日 初稿:2006年10月1日 撮影: タイ国の各地


タイの仏教寺院境内を散策していると、樹高3〜5mの常緑j樹に咲くプルメリアの五弁花 と 草

地に落ちた幾つもの花弁が目に留まります。微風でもあれば、プルメリアの花弁が、錐もみして

舞い落ちる雅な光景に木偶合わすこともあります。



パタヤ海岸を見下ろすカーオ・プラバート仏教寺院のプルメリア


インド北東部の釈迦牟尼の仏跡地を巡った時、紀元前の仏教寺院遺跡の片隅に咲いているプ

ルメリアの五弁花を幾つも見掛けました。インドやタイだけではありません。欧州やハワイの教会

、何処かの国で迷い込んだ墓地でも、花芯が薄黄色に染まったプルメリアの白い花弁を、彼方

此方で見かけたことを覚えています。 




Plumeria Acutifolia (フランジュパニ) でしょうか? 


海外では様々な名前で呼ばれていますが、寺院、教会、墓場に絡む名付けが多いようです。

プルメリアのタイ語名を知りたくて、タイ仏教の僧侶に訊ねてみました。

■Graveyard Flower (墓場の花) ■Temple Tree (寺院の木) ■Pagoda Tree (仏塔の木)



 『 この花木の名前は何ですか? 』


 『 Temple tree とか Pagoda tree と呼ばれているようですね 』


 『 英語名ではなく、タイ語の名前と綴りを知りたいのですが 』


 『 現在は “リーラー・ワディー” ( Liilaa wadii ) と呼ばれていますね 』


 『 どのような意味ですか? 』


 『 “ 優美に歩く女性の姿 ” とでも翻訳すれば良いのでしょうか 』


タイに住み着いて間もない頃、タイの地方を巡った折に、タイ・スコータイ王朝時代に創造された

遊行仏の優美な歩行姿に魅了されました。 暫らくの間、年甲斐もなく、遊行仏の追っ駆けを目

的として旅行したことがあります。


その遊行仏仏のタイ語名が 『 Phra Liilaa 』 (プラ・リーラー) だったことを思い出しました。英語

では Walking Buddha などと書きますので、御存知の方も多いのではないでしょうか。 釈迦

牟尼が、初めて説教するために第一歩を踏み出した優美な姿を表現した動的な立像です。



 Plumeria Rubra でしょうか?


数人の僧侶から、プルメリアのタイ語名の変遷に纏わる面白い話を教えて貰いました。

『 この花はね、チョット前まで、タイ人から随分と嫌われていました 』

『 個人の庭に植えることもなかったし、飾り花にすることもありませんでした 』

『 この花がある場所と言えば、お寺だけだったと思いますよ 』

『 現在の花名はプラ・リーラー ですが、ちょっと前までは酷い渾名がありました 』

『 元々の名前は、ラン・トムですが、いつも、ロムターンの蔑称で呼ばれていました 』

『 興味があれば、もっと話してあげますよ』



錐揉みして舞い落ちた五弁の花弁 


僧侶の話によると、此の花の元々の花名である ラン・トム Lanthomは、“悲しくて辛い” を意

味する Rathom の発音にも似ている上に、タイ語独特の回転語で読むと、ロムターン(意味:貴

方の屁)となることから、タイの人々から、“極めて不快で不吉な花” との烙印を押されてしまった

のです。


タイの人々は、回転語 (カム・プアン Kham phuan) を重視する伝統文化があり、回転語で読ん

だ時に悪しき意味を含む言葉を、酷く忌み嫌う風習が今でもあるそうです。 タイの王様や王族

へ奏上する場合、回転語で悪しき意味を持つ単語は、必ず他の表現に置き換えるといいます。

異文化圏から見れば、他愛のない言葉遊びに見えますが、タイの人々は真剣なのです。

このような頑固な文化的風習から、この花は、タイの一般家庭から排除されてしまい、此の花を

受け入れるのは、タイ上座部仏教寺院だけになってしまったと言うことのようです。



黄色の花弁もあります。


しかし、“ 捨てる神あれば拾う神あり” 、プルメリアの美しさに着目されたタイ王室のシリントーン王

(注)の発案によって、貴方の屁とか悲しみの花とまで蔑まれ疎んじられていた花が不死鳥の

如く蘇えったのです。 優美な花冠のプルメリアの復活を心から願われたシリントーン王女がお

考えになった新しい花名は、“ 優美に歩く女性の姿 ” を意味する 『 リーラー・ワディー 』(注)

と言う美しい響きのタイ語でした。


(注)プラテープ・シリントーン王女(1955年生)。 現国王のラーマ9世とシリキット王妃の次女。
   王様に次いでタイ国民から敬愛されている御方です。

(注)
リーラー Liilaa=優美に歩く姿 、  ワディー Wadii=女性を示す接尾辞


タイ国民の老若男女の間で人気の高いシリントーン王女によって命名された麗しき花名のリーラ

ー・ワディーは、またたく間にタイ国民の間に広まり、『 ロム・ターン 』 (貴方の屁) や  『 ラトム

』 (悲しくて辛い) の渾名は、 人々の口の端にも上らなくなり、今では、『ロム・ターン』の渾名を知

らない若人もいます。



花弁の色は多彩ですが、花芯は黄色を帯びています。 


僧侶の話は続きます。異民族が先住するタイ北部、東北部、南部は、回転語(カム・プアン)の文

化が伝搬せず、『 貴方の屁 』 や 『 悲しくて辛い 』 などの蔑称が流布することはなかったようで

す。 タイ語辞書の中で、プルメリアのタイの地域別の呼称を調べました。

 ≪地域≫  ≪花の呼称≫   −
 タイ北部地域  ジャンパー・ラーオ Jampaa Laao
 タイ東北地域   ジャンパー・カーオ Jampaa Khaao
 タイ南部地域  ジャンパー・コーム  Jampaa Khom


当該地域では、昔からジャンパーの名前で呼ばれ、個人の庭でも自由に植えられているようです。



見るからに幸せそうなプルメリアの花


今では、女性御用達のスパのシンボル・マーク、結婚式場やパーティ会場のコサージュとしても、

頻繁に使われるようになり、まさに揺り篭から墓場までを彩る代表的な花に生まれ変わりました。


タイ社会で不当に差別化されて来た歴史を持つプルメリアですが、王女から賜った名前のお蔭で

、『優美に歩く女性』 に変身したという、タイ版 “醜いアヒルの子”  のお話でした。


この主題に関連するホームページ内の別の記事

プルメリア・プティカはプルメリアの原種系ですか?   (クリックすると移ります)




  学名   白花 Plumeria Acutifolia  ( 別名:フランジュパニ )、赤花 Plumeria rubra
  (プルメリアは世界に50種〜80種?)
  科名   キョウチクトウ科 ( 夾竹桃科 )
  属名   プルメリア属
  日本名   インド・ソケイ( インド素馨 )、プルメリア
  英名   Temple Tree(寺院の花) 、 Pagoda Tree(仏塔の花) 、
  Graveyard Flower(墓場の花) 、Pua Melia ( ハワイ語 )
  タイ名   Linlay -Wade (リーラー・ワディー) 、 旧名称=Lanthom (ラントム)
  王室呼称 =Moaths khaao  (天国の木)
  性状   常緑低木 (樹高は3〜5m)。 葉は部厚い革質で艶がある。
  茎は多肉質で折れ易い。有毒な白い乳液を分泌。
  分布   西インド諸島 、 熱帯アメリカ
  花言葉   恵まれた人、風刺、内気な乙女、情熱、熱心、気品、日だまり





 読者の方から頂戴したコメント

hiro-1からのお返し


■無題
はじめまして、凄く魅力のある花だと思います。 1月に息子夫婦の結婚式でモルディブへ行ってきましたが、プルメリアの花が咲いていました。花嫁さんのブーケにも使いました。 ハワイなどでは お墓に咲いてるとのこと。でも 亡くなった方も きっとこの花に癒されているかもしれませんね。次回も楽しみにしています
風呼ママ 2010-03-31 01:00:26


■Re:風呼ママさん
墓地や寺院に咲くプルメリアが多いので、亡くなった人も癒されているに違いないと纏めようと思っていたのですが、風呼ママさんに先を読まれてしまいました。
hiro-1 2010-03-31 01:32:01


■無題
プルメリア・・・私も大好きな花です・南国に行くと黙って枝を数本頂いてきますが、日本で花を咲かせるのは本当に大変・・・やっぱり気温がネックでしょうか? ご存知かも知れませんが 樹液には毒があって・・・ つい傷をしてる手で触ってしまうとその日のうちに高熱が出ちゃいます。気をつけてくださいね^^ そんな名前の由来だったのですね〜 楽しいお話をいつもありがとうございます
sasara 2010-03-31 02:27:55  


■Re:sasaraさん
お読み戴きありがとう御座います。日本では温室栽培になるのでしょうね。葉と茎からの分泌液は有毒だと聞いていますが、幸いにして発熱に至ったことはありません。気をつけることにしましょう。
hiro-1 2010-03-31 11:43:01

inserted by FC2 system