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トーチジンジャーは香味菜? 装飾花? 供花?


HP編集略号daalaa3.html
 
和名:カンタン

英語名: Torch Ginger タイ語名: Daalaa
改編:2014年6月28日  初稿:2007年3月5日  撮影: タイ・カーンチャナブリー、サムットプラカーン


 『 トーチ・ジンジャー 』は、炎の点る松明に似た生姜の花 です。常緑樹のトーチ・ジンジャーは、4m以上の

樹高がありますが、苞花は地上1m位に咲くので、見過ごしてしまう事もあります。 (下写真)


タイに魅せられてロングステイ


 品質の優れたトーチ・ジンジャーの地下根茎をはぐくむコツは、8月〜9月の雨季に、地下茎をはぐくむ土壌

をしっかりと作り、出荷の最盛期を乾季の12月に合わせる事だったそうですが、最近は、一年を通して流通す

る園芸技術の研究開発によって、観賞用花としての市場性は、急速に拡大伸長しているようです。


トーチ・ジンジャーのタイ式圃場  タイ語HPより拝借)

 英語名の Torch Ginger とタイ語名の Daalaa は、幾度となく聞いていたので承知していたのですが、

日本名は、迂闊にも最近まで知らなかったのですが、『 カンタン 』とありました。純粋和名なのか、

外来語なのか全く分かりません。


 ある時、タイ園芸紙を読んでいると、タイ語名ダーラーのマレー語は 『Bunga Kantan 』 であると

記された説明文章を期せずして発見! マレー語綴りの 『 Bunga Kantan 』 を検索すると、Bunga=花、

Kantan=生姜であるとの記述を発見。 結論を矢鱈に急ぐつもりはありませんが、インドネシア語の

『Kantan』 が、そのまま日本語名にされた可能性もありですね。


@茎の先端で育つトーチ・ジンジャーの薄桃色の苞花


 トーチ・ジンジャーの茎先に、苞蕾が芽吹いています。 (↑@写真) 東南アジアでは、香味野菜として使用

されることが多いようですね。苞蕾を縦半分にカット。カレーやスープの香味菜として使用します。食用以外

にも、ホテルの観賞用や仏像の供華にも使用されています。


 トーチ・ジンジャーに似た仲間として、レッド・ジンジャーがありますが、こちらは、漢方薬としての用途の方が

圧倒的に高いようですね。


A花蕾と見間違うようなトーチ・ジンジャーの桃色苞花


 タイ園芸誌に、この植物を観賞花として売り込んだタイ人の話がありました。


   
西暦1971年、トーチ・ジンジャーを香味野菜として生産していたノンタブリ県の農民がいました。

  彼は、トーチ・ジンジャーを観賞花として売るために、バンコクの大型ホテルに売り込みを掛けます。
 
  ホテルマンは、『食べられないショウガの花なんて必要ない』と追い返してしまいます。

  
   それでも、観賞用としての可能性を追い求める彼の尽力に根負けしたホテル側が、ほんの試しの

  つもりで、ロビーに飾ったところ、意外にも欧州の女性客から絶賛されたというのです。

   自信を得た彼は、観賞花としてのトーチ・ジンジャーの量産体制を整えるための研究開発に着手。
 
  西暦1976年(昭和51年)から、大規模ホテルや各種イベント会場に本格販売を開始し、今では、

  新しい事業として確立し、更なる発展を続けているようです。


きっと、南国らしい苞花の容姿が、欧州の白人女性の琴線を打ったのでしょうね。


B 苞花が開くと炎が点った松明のように見えます。


 2007年現在のバンコクにおけるトーチ・ジンジャーの市場価格は、タイ人価格1本10バーツ (¥30)、

外国人価格は 30バーツ(¥90)だす。 タイのタクシン元首相派(赤服グループ)が現政府(黄服グループ)

に対して、法律解釈のダブル・スタンダードを問題にしてデモを繰り返していますが、外国人価格という

二重価格制度を問題にする人はいないようです。


 日本の通販価格では、 ト−チ・ジンジャー1株あたりの価格は7,800円 。 タイの花屋台で売られている

1本の価格が 20バーツから40バーツ (60円〜120円)。 価格差は、1株と1 本の違いなのでしょうか?

それにしても大きな違いですね。


タイに魅せられてロングステイ
仏教寺院で供えられるト−チ・ジンジャー


 昨今は、寺院の釈迦牟尼仏の供華としても用いられています。 仏像に貼る金箔と花一輪をセットにした

価格は20バーツ (60円)。 寺院の供花だからか、さすがに2重価格制度はありませんでした。


 供華としてのトーチ・ジンジャーは、開花した苞花ではなく、開花前の苞蕾に近い状態の苞花が使用されて

いました。 僕の想像ですが、仏像に手を合わせる両手の形(合掌)が開花前の苞蕾の形状に似ているからで

はないでしょうか?


 茎頂で開いた苞花は、揺らめく炎の松明を彷彿とさせます。『 生姜の松明 』 を意味する英語名のトーチ・

ジンジャーは、記憶に残り易いまさにピッタリの名前のような気がします。


タイに魅せられてロングステイ
C 風で揺れる松明の炎に見えませんか? D 成長とともに半球状の花穂が顔を出します。


 トーチ・ジンジャーのタイ語名の『 Daalaa 』 は、大きく花開いて繁茂する花を意味しますが、それとは異なっ

た綴りの日本人には聞き分け難い 『 Daaraa 』 (意味:俳優)という紛らわしい発音のタイ語があります。


 タイ語は声調言語なので、前者の声調は rising tone 。 後者の声調は平音の middle tone です。更に面倒

な事は、此等の単語の綴りに、日本人が苦手とする  “L” と “R” の文字が入っています。 片仮名表記では

どちらもダーラーとなってしまい、声調言語を片仮名で表記する限界を思い知らされます。


 『 Daalaa 』 と 『 Daaraa 』 の声調の違い程度ならば、日本語の『 端 』、『 箸 』、『 橋 』、『 嘴 』 と同じだと思

われるかもしれませんが、生まれながらにして五種類の声調を喋って聴き分けるタイ人の聴力は、日本人のお

おらかな耳とは全く違います。 外国人と接する経験の少ないタイ人に対して間違った声調で語り掛けると、

90%以上の確率でチンプンカンプン状態となり、意思疎通できなくなること必定です。 


E最盛期の花穂 F満開を過ぎた花穂 G萎れた苞葉 H枯れ落ちた苞葉


 開いた苞葉の中で半球形の鮮紅色の花穂が成熟する姿は、情熱的に舞い踊るフラメンコ・ダンサーの姿を

彷彿とさせます。  ブログの読者でカービングの女性プロの方から、苞花が題材の参考になるとの御意見を

頂きました。言われて見れば、自然の中で生まれた植物なのに、まるで人工的に細工された花弁のように

見えますね。


 人それぞれによって、花の好みが違うのは当然ですが、僕のお気に入りは、写真C〜Dの開花したレベル

です。 花穂が更に成長した後に、苞花が開き切って力を失うと、なんだか気持ちまで萎えてしまいそうに

なってしまいます。 円熟期を過ぎて朽ちてしまうと、苞花はすっかり色香を失い、剥き出しになった花穂も急速に

彩を落として終焉を迎えます。




 2010年末に滞在した南パタヤのNong Nut 公園で、薄桃色のトーチ・ジンジャーを初めて見ました。

残念ながら、花穂の盛りはとうの昔に過ぎてしまい、円熟期からすっかり老年期に移行した苞花ばかり。

それでも、それなりに神秘的な雰囲気を醸しだしていて、最後の英姿を、これまでとばかりに曝け出して

いました。


 半球形花穂を支えていた一本茎を見ると堅牢そうな棒状茎です。花穂を支える長い茎の寿命は、

10年から20年近くもあるそうです。お年寄りの間では、軽くて丈夫な歩行杖として人気があるようです。


 トーチ・ジンジャーの学名: Elatior の意味は、頑健、頑丈だそうです。 ハワイ語の アワ・プヒ・コ・オコ・オ

の意味も “棒状の杖 ”だそうです。近い将来の為に、トーチ・ジンジャーの杖でも購入して置きましょうか。    


   (注)アワ・プヒ = 杖、 コ・オコ・オ = 支柱、棒、杖



 追記:

 先述した トーチ・ジンジャーの商品化に成功したノンタブリの園芸家のHPを読んでいると、蝋細工を

思わせるような純白のトーチ・ジンジャーの開発に成功したとの記述がありました。まだ滅多に咲かない

花のようですが、自分の目で直接見てみたいものです。 (下写真)


白花のトーチジンジャ−  (タイ園芸家のHPより拝借)


 トーチ・ジンジャーの学名は、Alpinia elatior Jack、Nioolaia Elatior Horan. と Etlingera elatior(Jack)R.M.Smith

の2つの名前が記されていて困惑したのですが、次のような記述を見つけて納得しました。


 1822年  Alpinia elatior Jack として学名登録。 
 1862年  Nioolaia elatior Horan. として学名変更。
 1986年  Etlingera elatior R.M. Smith として学名統合。


 トーチ・ジンジャーの属名にも、Achasma属、 Geanthus属、 Nicolaia属、 Torch Ginger属、Etlingera属などの名前

がありましたが、現在は Etlingera属に統合されたとの記述がありました。 学名や属名などが資料によって異なる

理由が分からなかったのですが、見直しや統合によって変更になることがある事を初めて知りました。



=トーチジンジャーの植物分類名の整理=
 学   名  Etlingera elatior(Jack)R.M.Smith (=Alpinia elatior Jack=Nioolaia Elatior Horan.)       
 科   名  ショウガ科    Zingiberaceae
 属   名  エトリンゲラ属   Etlingera 
 和   名  カンタン 、 (別名:トーチジンジャー)
 英   名  トーチ・ジンジャー ( Torch Ginger )  意味:松明のような生姜?
 ハワイ名  アワ プヒ コ オコ オ (Awa Puhi ko Oko)     意味:杖のような生姜?
 タイ語名  ダーラー (Daalaa)、地方名 :Kalaa,Kaalaa, 意味:大きく花開いて繁茂する花 
 マレー語  ブンガ・カンタン (Bunga Kantan)   意味:生姜の花
 性   状  常緑多年草、 茎高は3〜4m、 花径は15〜20cm、花色は真紅、朱色、桃色、白色
 分   布  東南アジア  ( インドネシア、マレーシア、タイなど )
 花 言 葉  無駄なこと
 用   途  若い花序=香味野菜、果実=生食、種子=香辛料、 半開の花=仏像の献花、満開の花=装飾花



この主題に関連するホームページ内の別の記事 (主題をクリックすると該当頁に移ります)

 主題  改稿年月日  初稿年月日  HP編集略号
 トーチジンジャーの苞蕾  2014-6-28   2009-5-13  daalaa1.htm
 トーチジンジャーの苞花  2014-6-28   2009-5-14  daalaa2.htm
 トーチジンジャーの和名はカンタン 当該頁  2014-6-28   2007-3-5  daalaa3.html





読者の方から頂戴したコメント

hiro-1からのお返し


■素敵!
なんて魅惑的なのでしょうか!開花する前も開花した直後最後まで見事な色合いと容姿ですね♪  カービングの参考になるような素敵な写真をありがとうございます♪
pan 2009-05-14 10:53:15


■panさん
凹凸のハッキリした花なのでカービング向きなのでしょうね。
hiro-1 2009-05-15 01:58:01

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